私が息を切らしながら目的地に着いたのは、面接の時刻ジャストでした。
私は中に入る前に息を整えようと立ち止まりました。
そこは普通のマンションでした。それほど大きくはありません。
やけにひっそりとしているな、と感じました。
人は住んでいるのかしら? と思いつつ中に入ってみると、薄暗く静かで、ちと不気味に感じました。
私はそろそろと階段をあがり、チャイムを鳴らしました。
インターフォンから応答があったので、私は自分の名を告げました。
少ししてドアが開きました。中年男性が出迎えてくれました。
言葉少なげな人で、暗ーい印象が建物とマッチしていました。
部屋は数室あるようでしたが、廊下はカーテンで仕切られていて間取りはよくわかりませんでした。
私は玄関正面の部屋に案内されました。
テーブルとイスが置いてある、来客用か打ち合わせ室のようでした。
ふたり向かい合って面接となりました。
彼、しゃべりかたも暗かったですね。
こういう小さな設計事務所って忙しいですから疲れていたのかもしれないです。
髪がボサボサでした。
面接では、私の職務経歴やなんかについてはほとんど質問されませんでした。
男性は、メモ書きをテーブルに置き、待遇について説明しました。
言うことをあらかじめ書いておいたみたいでした。律儀ですね。
彼は言いました。
「うちは、社会保険はないんです」
え……正社員なのに? と私は思いました。けれど、説明を最後まで聞いてから質問することにしました。
「あと、残業代はつきません」
「……」なんですって?
「けっこう残業が多いですが大丈夫ですか」
「どのくらいあるんですか」
「だいたい毎日10時くらいまでです」
「……」ゲッ。
「じつは前働いていた女性も遅くまで残業してもらっていたんですが、2カ月で辞めてしまったんですよ」
「はぁ……」2カ月もよくがんばったね。
「どうやら同棲していたらしくて、彼氏に辞めろって言われたそうで、どういうつもりだろうと思ったんですよ」
どうゆうつもりって……当たり前だろう? 毎日残業ばっかりで、手当ては一切つかなくて、社会保険がないだなんて。
ここで私は訊きました。
「あの、社会保険がないって、年金とか保険とかは自分もちってことですよね」
「ええ。うちは下請けで図面を描いてるのでお金がなくて払えないんですよ」
私はこのとき悟りました。なぜこの事務所が正社員での募集をかけたのかを。
働く側としてはメリットは皆無です。社会保険がなくて残業代が出ないのであれば、アルバイトのほうが割に合うでしょう。
しかし、この事務所、アルバイトでは雇えないのです。
アルバイトだと時間給で払うことになりますよね。もちろん残業代も含まれてしまいます。
だから正社員、なのですよ。
朝から晩までこき使っても、固定給で1カ月○○円(税込み約14万円)ポッキリにできるわけです。
これには私、あったまきた!!
「私、社会保険があるところがいいんです」
「ああ、厚生年金ですよね……受取額が変わりますからね」
「そういうことはきちんとしておきたいんです」
「社会保険って高いんですよ。うちでは払えないんです」
「……」
「……」
気まずい空気でしたが、私は知ったこっちゃありません。
相手の男性は「じゃあ……」と、私の履歴書を返してきました。
私はせっかく電車を乗り継いで、必死に踏切を探して、ゼーハーいいながらたどり着いたというのに、こんな結末は許せませんでした。
詐欺と言っても言いすぎじゃないでしょう(実際には詐欺じゃないところがまたムカつく)。
私は履歴書を受け取り、さっさとそのマンションを出ました。
そして、帰りも回り道して踏切を渡り、駅へと向かったのでした。
この面接は、ほんとにトホホでした。
求人広告だけでは見抜けないことってあるけれど、この会社はひどかった……正社員って、そういう落とし穴があったのね。
私は中に入る前に息を整えようと立ち止まりました。
そこは普通のマンションでした。それほど大きくはありません。
やけにひっそりとしているな、と感じました。
人は住んでいるのかしら? と思いつつ中に入ってみると、薄暗く静かで、ちと不気味に感じました。
私はそろそろと階段をあがり、チャイムを鳴らしました。
インターフォンから応答があったので、私は自分の名を告げました。
少ししてドアが開きました。中年男性が出迎えてくれました。
言葉少なげな人で、暗ーい印象が建物とマッチしていました。
部屋は数室あるようでしたが、廊下はカーテンで仕切られていて間取りはよくわかりませんでした。
私は玄関正面の部屋に案内されました。
テーブルとイスが置いてある、来客用か打ち合わせ室のようでした。
ふたり向かい合って面接となりました。
彼、しゃべりかたも暗かったですね。
こういう小さな設計事務所って忙しいですから疲れていたのかもしれないです。
髪がボサボサでした。
面接では、私の職務経歴やなんかについてはほとんど質問されませんでした。
男性は、メモ書きをテーブルに置き、待遇について説明しました。
言うことをあらかじめ書いておいたみたいでした。律儀ですね。
彼は言いました。
「うちは、社会保険はないんです」
え……正社員なのに? と私は思いました。けれど、説明を最後まで聞いてから質問することにしました。
「あと、残業代はつきません」
「……」なんですって?
「けっこう残業が多いですが大丈夫ですか」
「どのくらいあるんですか」
「だいたい毎日10時くらいまでです」
「……」ゲッ。
「じつは前働いていた女性も遅くまで残業してもらっていたんですが、2カ月で辞めてしまったんですよ」
「はぁ……」2カ月もよくがんばったね。
「どうやら同棲していたらしくて、彼氏に辞めろって言われたそうで、どういうつもりだろうと思ったんですよ」
どうゆうつもりって……当たり前だろう? 毎日残業ばっかりで、手当ては一切つかなくて、社会保険がないだなんて。
ここで私は訊きました。
「あの、社会保険がないって、年金とか保険とかは自分もちってことですよね」
「ええ。うちは下請けで図面を描いてるのでお金がなくて払えないんですよ」
私はこのとき悟りました。なぜこの事務所が正社員での募集をかけたのかを。
働く側としてはメリットは皆無です。社会保険がなくて残業代が出ないのであれば、アルバイトのほうが割に合うでしょう。
しかし、この事務所、アルバイトでは雇えないのです。
アルバイトだと時間給で払うことになりますよね。もちろん残業代も含まれてしまいます。
だから正社員、なのですよ。
朝から晩までこき使っても、固定給で1カ月○○円(税込み約14万円)ポッキリにできるわけです。
これには私、あったまきた!!
「私、社会保険があるところがいいんです」
「ああ、厚生年金ですよね……受取額が変わりますからね」
「そういうことはきちんとしておきたいんです」
「社会保険って高いんですよ。うちでは払えないんです」
「……」
「……」
気まずい空気でしたが、私は知ったこっちゃありません。
相手の男性は「じゃあ……」と、私の履歴書を返してきました。
私はせっかく電車を乗り継いで、必死に踏切を探して、ゼーハーいいながらたどり着いたというのに、こんな結末は許せませんでした。
詐欺と言っても言いすぎじゃないでしょう(実際には詐欺じゃないところがまたムカつく)。
私は履歴書を受け取り、さっさとそのマンションを出ました。
そして、帰りも回り道して踏切を渡り、駅へと向かったのでした。
この面接は、ほんとにトホホでした。
求人広告だけでは見抜けないことってあるけれど、この会社はひどかった……正社員って、そういう落とし穴があったのね。
この記事へのコメント
お久しぶりです。
例え正社員でも、それは明らかに違法ですよね(^^)
経営者として失格です。
話にならんレベルなので、そんなつまんない所に引っかからなかっただけでも、はこべさんは幸運だったと思いましょうよ。
相手が、面接で「うちの事務所は違法な雇用形態なんですが、入ってもらえますか?」って、正体を明かしてくれたんですから。
一人自営業のおいらとしては、そんな奴らがまかり通ること自体が腹立たしいのですけどね。
例え正社員でも、それは明らかに違法ですよね(^^)
経営者として失格です。
話にならんレベルなので、そんなつまんない所に引っかからなかっただけでも、はこべさんは幸運だったと思いましょうよ。
相手が、面接で「うちの事務所は違法な雇用形態なんですが、入ってもらえますか?」って、正体を明かしてくれたんですから。
一人自営業のおいらとしては、そんな奴らがまかり通ること自体が腹立たしいのですけどね。
ふとどきさん、コメントありがとうございました。
あの事務所、私が労働局にチクッたらどうなるのかしらと思いました。
さすがに実行はしませんが、過酷な条件を強いられている労働者はたくさんいますから、なんとかならなものかと考えてしまいます。
あの事務所、私が労働局にチクッたらどうなるのかしらと思いました。
さすがに実行はしませんが、過酷な条件を強いられている労働者はたくさんいますから、なんとかならなものかと考えてしまいます。
2007/02/25(日) 05:52 | URL | はこべ #-[ 編集]
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