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ここからの話は――
美容形成外科 仕事終了」1、2行目。
>気分が回復した私は、仕事に戻りました。
>オペは見学できませんでしたが、それ以外では、夕方まで全力で働きました。

↑この2行のあいだに起きた出来事です。


脂肪吸引のオペを見学して貧血になった私は、オペ室を抜け出して、洗い場の陰で血の気が戻ってくるのを待ちました。
五、六分経ったでしょうか。いつまでも休んでいたら、サボっていると誤解されるかもしれません。私は、いくらか気分が回復したので、三日月のところに戻ることにしました。

オペは終わりにさしかかっていました。
三日月は、患者から棒を抜き、
「もうここまでだな。これ以上は無理だ」と言いました。
そう三日月が判断したように、ガラス瓶はオレンジの液体で満杯になっていました。

看護師は機械のスイッチを切り、縫合に必要な道具を用意しました。
釣り針のように曲がった針には、あらかじめ十センチくらいの長さの糸がついていました。ソーイングが趣味の私は、糸は使うたびに針に通すものだと思っていたから、その合理性には感心したものでした。

三日月は針を受け取り、さっきまで棒を突っ込んでいた切り口を縫い合わせました。縫い終われば看護師が糸を切り、次の切り口へ。
そのとき、三日月が余計なことを言い出しました。
「ほら、そこからじゃ見えないだろ。近くに来て見ていいよ」
できるかっ! と私は思いました。

ここで、もうひとりの新入りのI(※)が、「では遠慮なく」という感じで手術台に近寄り、まじまじとオペに見入りました。
(※)ここまでの「美容形成外科」では登場させなかったのですが、じつは、新入りは私ひとりじゃなかったんです。
Iはとても美人でした。背も高いし、ちょっとがんばればモデルになれそうでした。
私は、白の美人看護師といい、このIといい、ひょっとしたら三日月の趣味かもしれないな、と深読みしてみたものです。けっこうありそうなのがこわかったです。
ちなみに、Iも看護師の資格は持っていないとのことでした。

「どう? Iさん」
手の動きを緩めて、三日月が訊きました。
「手さばきが鮮やかですごいですね。思わず見とれてしまいました」
とIが答えました。

その反応が私は信じられなくて、彼女の表情を観察してみました。やはり顔色を失っているわけでもなく、むしろ興味深げに見ていました。どうやらお世辞ではないらしく、ほんとうに魅せられたかのように目を輝かせていたのです。Iはきれいな顔をしているだけに、私は恐ろしくなって体をこわばらせました。

それでも、Iの感想はあながちはずれていなかったようです。
三日月は針を巧みに操り、次々と縫い合わせていきました。看護師が糸を切るのが追いつかないくらいの早業でした。
「Iさん、ちゃんと見てる?」
三日月が、ニタニタとIを見ました。
「ほんとうにすごいですね。見入ってしまいますよ」とI。
私は黙っていました。こんな会話にはついていけませんでした。

それから間もなく、すべての切り口が縫い合わされました。
「俺って天才だよなあ。ほら見てよ。きれいでしょ?」
三日月は、患者の太ももをもみほぐして表面をならしながら自画自賛しました。
「きれいですねえ」
と、今度は白の看護師が絶賛しました。
そんなやり取りが続くにつれ、私には彼らが病んでいるとしか感じられませんでした。

あとは看護師が、包帯を患者の足にグルグルと巻きつけました。これでこのオペは終了でした。
三日月と看護師は、次のオペのための準備に向かいました。
私とIは残って後片付けをすることになりました。


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