おととしの12月。私は求人誌で、大手出版社の広告を見つけました。
フリーペーパーに掲載する原稿作成の仕事でした。
待遇がいいので競争率は高そうでしたけれど、応募するしかありませんでした。めぼしい求人はそれだけでしたから。
私は広告の指示通りに電話連絡をして、面接の約束をしました。筆記テストもあるとのことで、気が重くなりました。現役をはなれてずいぶんと経っています。テスト問題なんて解けるのでしょうか。
その出版社は、ある高層ビルの中にありました。
私は回転ドアから中に入り、エレベーターへと向かいました。乗り込んで目的のフロアのボタンを押すと、エレベーターは軽やかに上昇しました。
説明会の会場は、廊下の一番奥にありました。広い室内には、すでに15、6名の人たちが着席していました。
私は空いている席に座り、緊張しながら周りを見渡しました。
みんなグレーや紺色のスーツを着て、まっすぐ前を向いていました。当たり前だけど誰も何もしゃべらないので静かでした。
私はあらためて、こんなにも大勢の人たちが仕事を求めて集まってきたのかと驚いたものです。
説明会は午後一時半から開始されました。担当者の男性がやってきて、彼から最初に仕事の内容や雇用条件などの説明を受けました。
そのあとは、筆記試験と適正試験が待ち構えていました。言語と非言語(国語と算数)の二科目と適性検査で、時間にして2、3時間ということでした。けっこうな労力です。
にもかかわらず担当者は、「面接官が急な出張のため」などと見えすいた口実で、本日は面接がないことを告げました。
私はとてもがっかりしました。先日電話で問い合わせたときには面接をするという約束だったのに、結局、書類選考と試験をパスしなければ会ってはもらえないということなのでしょうか。
求人広告では資格も経験も必要ないと謳っていたわりに、実際には厳しい扱いでした。
なんかずるいですよね。
でも、かなり待遇がいいので、ぜひとも採用されたい私は、必死になってマークシートを塗りつぶしました。
試験を終え、私が家に着いたのは夕方でした。実家で両親と暮らしています。私は、母にこの日のことを報告しました。面接してもらえなかったことや、どうやら試験がかんばしくないだろうということを。
母親はただ笑って聞いていました。でも、ほんとうはその胸の内で、30歳を過ぎても結婚するでもなく職探しに苦労している娘を心配しているに違いありませんでした。
私のほうだって心得ていました。だから私は早くいい仕事を見つけようと就職活動を続けていたのですが、かなり苦戦していたのでした。
どうか面接してもらえますように、と私はかすかな望みを胸に抱き、出版社からの返事を待ちました。
それから一週間もしないうちに、選考結果の封書が私の家に届けられました。封を切ってみれば、私が提出した履歴書と、先方からの手紙が入っていました。手紙には、やんわりとお断りの文章が書いてありました。
私は納得いきませんでした。約束どおりに面接を受けて不採用になったならあきらめもつきました。が、半日つぶしてテストを受けさせておいて、書面であっさり断ってくるなんて、誠意が感じられませんでした。
はなから面接する気はなかったんじゃないかと疑いました。
私はため息をつき、手紙を破り捨てたのでした。
この話は、面接までいきませんでしたが、ウソは許せませんので書くことにしました。
ウソはいけません。ルール違反です。真剣に職を求める者に対して失礼です。
フリーペーパーに掲載する原稿作成の仕事でした。
待遇がいいので競争率は高そうでしたけれど、応募するしかありませんでした。めぼしい求人はそれだけでしたから。
私は広告の指示通りに電話連絡をして、面接の約束をしました。筆記テストもあるとのことで、気が重くなりました。現役をはなれてずいぶんと経っています。テスト問題なんて解けるのでしょうか。
その出版社は、ある高層ビルの中にありました。
私は回転ドアから中に入り、エレベーターへと向かいました。乗り込んで目的のフロアのボタンを押すと、エレベーターは軽やかに上昇しました。
説明会の会場は、廊下の一番奥にありました。広い室内には、すでに15、6名の人たちが着席していました。
私は空いている席に座り、緊張しながら周りを見渡しました。
みんなグレーや紺色のスーツを着て、まっすぐ前を向いていました。当たり前だけど誰も何もしゃべらないので静かでした。
私はあらためて、こんなにも大勢の人たちが仕事を求めて集まってきたのかと驚いたものです。
説明会は午後一時半から開始されました。担当者の男性がやってきて、彼から最初に仕事の内容や雇用条件などの説明を受けました。
そのあとは、筆記試験と適正試験が待ち構えていました。言語と非言語(国語と算数)の二科目と適性検査で、時間にして2、3時間ということでした。けっこうな労力です。
にもかかわらず担当者は、「面接官が急な出張のため」などと見えすいた口実で、本日は面接がないことを告げました。
私はとてもがっかりしました。先日電話で問い合わせたときには面接をするという約束だったのに、結局、書類選考と試験をパスしなければ会ってはもらえないということなのでしょうか。
求人広告では資格も経験も必要ないと謳っていたわりに、実際には厳しい扱いでした。
なんかずるいですよね。
でも、かなり待遇がいいので、ぜひとも採用されたい私は、必死になってマークシートを塗りつぶしました。
試験を終え、私が家に着いたのは夕方でした。実家で両親と暮らしています。私は、母にこの日のことを報告しました。面接してもらえなかったことや、どうやら試験がかんばしくないだろうということを。
母親はただ笑って聞いていました。でも、ほんとうはその胸の内で、30歳を過ぎても結婚するでもなく職探しに苦労している娘を心配しているに違いありませんでした。
私のほうだって心得ていました。だから私は早くいい仕事を見つけようと就職活動を続けていたのですが、かなり苦戦していたのでした。
どうか面接してもらえますように、と私はかすかな望みを胸に抱き、出版社からの返事を待ちました。
それから一週間もしないうちに、選考結果の封書が私の家に届けられました。封を切ってみれば、私が提出した履歴書と、先方からの手紙が入っていました。手紙には、やんわりとお断りの文章が書いてありました。
私は納得いきませんでした。約束どおりに面接を受けて不採用になったならあきらめもつきました。が、半日つぶしてテストを受けさせておいて、書面であっさり断ってくるなんて、誠意が感じられませんでした。
はなから面接する気はなかったんじゃないかと疑いました。
私はため息をつき、手紙を破り捨てたのでした。
この話は、面接までいきませんでしたが、ウソは許せませんので書くことにしました。
ウソはいけません。ルール違反です。真剣に職を求める者に対して失礼です。
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